失敗しても、信用を得たリンカーン



こんにちは、木村耕一です。


ミスを犯したり、人に迷惑をかけたら、まず、何をすべきでしょうか。
20歳過ぎのリンカーンは、失敗しても信用を得た、というエピソードを紹介しましょう。

「しまった!」
ある商店で働いていたリンカーンが叫んだ。
1日の売上金を確かめたところ、どうしても、3セント多いではないか。
ごまかそうという気持ちは少しも起きなかった。
誰に迷惑をかけたのか、そのことで頭がいっぱいになった。


記憶をたどっていくと、8ドル分の雑貨を買った婦人から、8ドル3セント受け取ったことが分かってきた。
明らかに自分の計算ミスである。


「ああ、申し訳ないことをしてしまった……」
そう思うと、もう、じっとしてはおれない。
彼は、さっそく戸締まりをして、店を飛び出した。
婦人の家は、だいたい見当がついている。
暗い夜道を、1時間余りも走って、ようやくたどり着くことができた。
「誠に申し訳ありません。実は、私が計算を間違えて、3セント多くいただいてしまったのです。まったく、私の過ちであります。お許しください」


彼は、一切、言い訳をせず、心から謝罪した。
「まあ! わずか3セントを返してくださるために、こんなに遠くまで来てくださったの」
婦人は、リンカーンの誠意に打たれた。
目の前に差し出された3セントの銅貨が、100万の金貨よりも値があるもののように映っていた。
「あなたの、その尊い気持ちは、今にきっと、真価を発揮する時が来ますよ」
20歳過ぎの、みすぼらしい店員に、輝かしい未来を感じたのであろう。
(『こころの道』より)



「ごまかさない」
「言い訳をしない」
「自分の非を認めて素直に謝る」
この3つは、信用を築くために、欠かせない心得です。


リンカーンの、誠実な人柄に、町の人々は、
「あんな立派な青年が議員になってくれれば……」
と、次第に期待を寄せるようになりました。
25歳でイリノイ州議会議員に当選。
そして、夜道を走った日から、約30年後──。
彼は、アメリカ合衆国、第16代大統領に選ばれました。


小さな誠意の積み重ねが、大きな花を咲かせたのです。




こころの道
木村耕一編著
定価 1,575円(税込)
(本体1,500円)
四六判上製 296ページ
ISBN4-925253-14-X

http://www.10000nen.com/?p=595