「母ちゃん」という響きには、特別な思いがこもっている

こんにちは、木村耕一です。

深代惇郎天声人語』を愛読しています。


中でも、「母ちゃん」(昭和48年4月15日)は、何度読んでもジーンときます。
そのまま掲載することができないので、出来事のあらすじを紹介しましょう。


22歳の男が、他人の運転免許証を盗んで、交通事故を起こしました。
男は、意識不明の重体。
免許証に記されている名前で入院となりました。

警察は、免許証の本当の持ち主の母親へ連絡。
母親は、驚いてが駆けつけてきました。
ベッドの中で、男は、顔中、白い包帯をまいて、横たわっています。
顔が見えないため、母親には、他人とは見抜けませんでした。
実は、この母の息子は、2年前に家出をして、音信不通だったのです。
「やっと息子に会えた」という思いで看病していました。

1週間後に、男は意識を取り戻します。
その時、ベッドの側に付き添っている婦人に、「母ちゃん」とつぶやきました。
何か聞かれると、男は、「頭を打ったのでよくわからないんだ、母ちゃん」と答えます。
母は、息子の背が高すぎると思いました。
でも、「背が伸びたんだ、母ちゃん」と言われ、何も聞けなかったといいます。
「母ちゃん」という響きには、特別な、温かい思いがこもっているように感じます。

そして5ヶ月間、病院で寝食を共にして看病し、顔の包帯をとったら、まったく別人だった……。
ウソのような本当の話です。

母親は、別人とは感じながらも、「母ちゃん」と慕ってくれる男を、行方不明の息子と重ねて、いたわっていたのではないでしょうか。
事故を起こした男は、「母親とは4つの時に死に別れ、母親の愛情を知らずに育った。入院中、初めて母の愛情を味わい、できることなら、そのまま息子になっていたかった……」と語っています。

わが子を思う親心。
親を慕う子供の心。
それぞれに、切なさを感じて、泣きたくなることがありませんか……。



新装版 親のこころ

木村耕一編著

定価 980円(税込)

(本体933円)

四六判 192ページ

978-4-925253-51-2

http://www.10000nen.com/?p=2260



ランキングに参加しています。皆さんのクリックが励みです。


にほんブログ村 本ブログ 作家・小説家へ
にほんブログ村