迷信(15)竜馬、日本最初の新婚旅行へ



こんにちは、木村耕一です。


日本で最初に新婚旅行をしたのは、坂本竜馬でした。

竜馬が負傷して、薩摩藩邸にかくまわれた時、献身的に看病した女性がいました。「おりょう」です。
2人の愛は、けがを縁として深まりました。
西郷隆盛が仲人となって結婚し、傷の療養をかねて、九州の塩浸温泉(しおびたしおんせん)や霧島温泉へ旅立ちました。

ネムーンの途中で、霧島山に登り、高千穂峰にある「天の逆鉾(あまのさかほこ)」を見に行っています。
この鉾は、天孫降臨(てんそんこうりん)のときに、神が手に持っていた鉾を、逆さまに突きたてたものだ、と信じられていました。

しかし、竜馬は、そういう神話は頭から信じていません。
「神社の者が、世に吹聴するために、勝手に作ったものだろう」
と見抜いていたのです。

竜馬は、自分の目で、「天の逆鉾(あまのさかほこ)」をつぶさに観察しました。
その結果、
「からかね(唐金)にてこしらえたものなり」
と書き残しています。
どこから見ても、人間が作った代物だったのです。
鉾のツカには、天狗の面が彫られています。
はたして、「天狗」という想像上の怪物が、神話の時代にいたのか?
いるはずがありません。
明らかに、後世、誰かが作ったとしか思えません。

ここまで道案内してくれた人が、
「天の逆鉾(あまのさかほこ)を抜いたら、火が降る、と昔からいわれている」
と止めるのもきかず、2人は、力を合わせて引き抜いてしまいました。
しかし、火など、降るはずがありません。
迷信だったのです。




竜馬は大よろこびをして、
おりょうよ、世間のすべてはこうだ、遠きに居るときは神秘めかしく見えるが、近づいてみればこのたぐいだ。将軍、大名のたぐいもこれとかわらない」
司馬遼太郎竜馬がゆく』より)



竜馬は、権威や伝統、周囲の考えに流されず、自分の目で確かめてから行動しようとしていました。
この精神があったからこそ、日本の歴史を動かすような活躍ができたのです。