迷信(11)坂本竜馬「神の正体とは、こんなものだ」



こんにちは、木村耕一です。


坂本竜馬が、18歳の時に、迷信を退治したエピソードが残っています。




土佐の城下のはずれに、念力で神を呼び出し、病気を治すという修験者がいた。
藩主の息子までが、その神を信じ、迷うようになったので、たちまち国内に流行したのである。
困ったのは側近たちだった。
「一国の世子ともあろう人が、そのような迷信を信じてはなりません」
と、いくらいさめても聞き入れない。

やむなく、世子の側近が、剣術道場の友人・坂本竜馬に相談したのである。
竜馬は、
「その神を、退治すればいいではないか」
と無造作に言い放つ。

修験者のもとへ行き、
「ご高名を聞き伝え、まいりました。ぜひ、神サマを拝みたいのですが……」
と頼み込んだ。
修験者は、得意な顔でうなずき、
「今晩、天狗台に来るように」
と言う。

約束の時間に、竜馬が台の下にひれ伏していると、やはり出てきた。
真っ黒な怪物が、
「われは石土蔵王権現(いしづちざおうごんげん)なるぞ!」
と叫ぶではないか。
しかし、次の瞬間、神は、地面に、たたき伏せられていた。
竜馬が、台の上へ飛び上がり、胸ぐらをつかんで引き倒したのである。
顔を見れば、案の定、例の修験者だった。
変装しただけの男に、病気を治す力など、あるはずがない。

竜馬は、人をだまし続けていた男の頬づらに、ゲンコツをくらわしてから、
「神の正体とは、たいてい、こんなものだ」
と言って立ち去った、という。



司馬遼太郎の『竜馬がゆく』に出てくるエピソードです。
「神の力で病気を治す」という、あやしい宗教の犠牲となり、命を落とす人は、今日でも、たびたびニュースで報じられています。
迷信は、退治しなければなりませんね。