迷信(12)孔明、人命を救った饅頭



こんにちは、木村耕一です。


饅頭(まんじゅう)を、最初に作ったのは、孔明だった……。
吉川英治の『三国志』には、そんな伝説が紹介されています。



蜀の大軍が、南方の国々を制圧し、都へ帰還する途中、大河に行きあたった。
そこで孔明は、この大河に、恐ろしい風習があることを知ったのである。
暴風雨で増水し、氾濫すると、神を祭り、3人を生け贄(いけにえ)として河へ沈めるというのだ。
洪水は、自然災害であって、神のたたりではない!
ここでも、迷信で、人命が奪われている。
悲しんだ孔明は、小麦粉に牛や羊の肉を混ぜて、人の頭の形を作らせた。
これを「饅頭」と呼び、生きた人間のかわりに、河へ沈めさせたという。


吉川英治は、生け贄(いけにえ)の数は3人、と書いているが、別の資料には、7749人の首を供える風習だったと記されている。
そんな大勢を殺さなければ、暴風雨がやまないはずがない。
低気圧が去れば、やがて晴れるのは当たり前。
しかし、そんなことを言っても理解できない人々を、迷信から救うために考え出されたのが「饅頭」だったのである。


「神のたたり」よりも、迷信に毒された人間の行為のほうが、はるかに恐ろしいと思います。