こんにちは、木村耕一です。
5月には「母の日」、6月には「父の日」があります。
プレゼントを呼びかけるコマーシャルが、年中行事のように流れてきますが、私たちは、親の恩を、どれだけ感じているでしょうか。
入社試験で、「親の体を洗ってくるように」といわれた青年のエピソードを紹介しましょう。
「君は今まで、親の体を洗ったことがあるかね」
ある青年が、一流企業の入社試験で、社長から、こんな質問を受けました。
「いいえ、一度もありません」
と答えると、社長は、意外なことを言ったのです。
「君、すまないが明日この時間にここへ来てくれないか。それまでに、親の体を洗ってきてほしいのだが、できるか」
「はい、何でもないことです」
と、青年は答えて家に帰りました。
父親は、彼が幼い時に亡くなりました。母親は、一人で必死に働いて子供を大学まで出させたのです。彼は、
「お母さんが呉服の行商から帰ったら、足を洗ってあげよう」
と思い、たらいに水をくんで待っていました。
帰宅した母親は、
「足ぐらい自分で洗うよ」
と言います。事情を話すと、
「そんなら洗ってもらおうか」
と、縁側に腰をおろしました。
「さあ、ここへ足を入れて」
と、青年は、たらいを持ってきます。母親は言われるとおりにしていました。
彼は、左手で母親の足を握りました。しかし、洗うはずの右手が動きません。そのまま両手で母親の足にすがりつき、声をあげて泣いてしまったのです。
「お母さんの足が、こんなに硬くなっている……。
棒のようになっている……。
学生時代に毎月送ってもらっていたお金を?当たり前?のように使っていたが、これほど苦労をかけていたとは……」
と知らされ、泣かずにおれなかったのです。
翌日、青年は、社長に、
「私は、この会社を受験したおかげで、どの学校でも教えてくれなかった親の『恩』ということを、初めて知らせてもらいました。ありがとうございました」
と、うれしそうに言ったそうです。
(『親のこころ』より)
このエピソードを、7年前に『親のこころ』に書いたとき、
「ああ、親に申し訳ない。自分も同じだ」
と反省したのを覚えています。
しかし、いつの間にか、忘れがちに……。
年老いていく親。
いつまでも健在とはかぎりません。
今年こそ、
「お母さん、いつも、ありがとう」
「お父さん、若い時に心配かけて、ごめんなさい」
と、心から言いたいと思っています。
親のこころ
木村耕一編著
定価 1,575円(税込)
(本体1,500円)
四六判上製 288ページ
ISBN4-925253-11-5