こんにちは、木村耕一です。
イギリスの大科学者、マイケル・ファラデーに、次のようなエピソードがあります。
ある日、研究室に学生を集め、
「この試験管の中に、少量の液体が入っている。何だと思う?」
と尋ねたのです。
学生は、ざわつくばかりで、答えがまとまりません。
ファラデーは、次のように説明しました。
「先程、ある学生のお母さんが、私のところへ来られた。
子供のことが心配のあまり、涙を流して語っていかれた。
母親の愛情の深さには、本当に心を打たれるものがある。
その時の涙が、この試験管の中に入っている」
意外な展開に、学生たちは静まり返ってしまいました。
ファラデーは続けて、こう言ったのです。
「確かに涙を化学的に分析すれば、少量の塩分と水分にすぎない。
しかし、母親の涙の中には、化学も分析しえない、深い愛情がこもっていることを知らねばならぬ」
私の大学時代を振り返ると、恥ずかしい思いがします。
「親に学費を出してもらうのは当たり前」という心が、どこかにありました。
親の苦労は見ていましたので、「申し訳ない」とは感じていましたが、それは実に、浅かったと思います。
母親の、一滴の涙の中には、長年にわたり子供を育ててきた苦労と、愛情の歴史が込められています。
その重さは、言葉や数字で表すことはできません。
「子を持って 初めて知る 親の恩」
といわれるように、親になってみないと、わからないものなのかもしれません。
親のこころ
木村耕一編著
定価 1,575円(税込)
(本体1,500円)
四六判上製 288ページ
ISBN4-925253-11-5
http://www.10000nen.com/?p=566