三国志(4)理想をかなえるために、なくてはならないものとは。関羽が商人から教えられたこと。『三国志』に学ぶ

こんにちは、木村耕一です。


理想を実現させるために、大切なものは何でしょうか。
会社でも、事業でも、家庭でも、これがなかったら、理想はかなえられない、というものがあります。


三国志』(吉川英治)に、次のような場面があります。


劉備関羽張飛の3人が、義兄弟の誓いをたて、国を憂う同志を募ったところ、200名の若者が集まりました。


中国の各地には、盗賊が横行し、略奪をほしいままにしいます。
これを討って、民に平和を取り戻したいという理想に燃える若者が集まったのです。


ある日、この劉備の私設軍隊に、馬を50頭、提供したいという商人が現れました。
商人は、関羽に尋ねます。

「事を計るうえは、人物はおそろいでございましょうし、馬もこれで整いました。これで一体、あなた方のご計画の内輪には、よく経済を切りまわして糧食兵費の内助の役目をする算数の達識がひかえているのでございますか。
 算盤(そろばん)というものも、充分お考えのうえでこのお仕事にかかっておいででございますか?」


そう指摘されてみると、関羽は、自らの仲間に、大きな欠陥があるのを見いだした。
経営ということであった。
自分はもとより、張飛にも、劉玄徳にも、経済的な観念は至っていない。
武人銭を愛さずといったような思想がはなはだ古くから頭の隅にある。
経済といえばむしろ卑しみ、銭といえば横を向くをもって清廉の士とする風が高い。
一個の人格にはそれも高風と仰ぎうるが、国家の体計となればそれでは不具を意味する。


一軍を持てばすでに経営を思わねばならぬ。
武力ばかりでふくらもうとする軍は暴軍に化しやすい。
古来、理想はあっても、そのため、暴軍と堕し、乱賊と終わった者、史上決して少なくはない。


「いや、いいことを聞かしてくれた。劉玄徳様にも、おおいにそのへんのことを話してもらいたいものだ」


関羽は、正直、教えられた気がしたのである。
一商人のことばといえども、これは将来の大切な問題だと考えついた。


    (吉川英治三国志』1)


頭で理想をこねまわし、口で熱弁をふるっても、経済的な裏付けがなければ、物事は成就しません。


三国志』というと、魏、呉、蜀の三国が、勇ましく死闘を繰り返す物語のような印象を与えます。


しかし、全編を通していえるのは、剣で勇ましく戦う以上に、まず、兵隊を養う食料調達、後方からの経済支援に重きがおかれていることです。


単純な話で、兵隊が増えれば増えるほど軍は強くなりますが、それだけ食料が必要になるのです。
食料がなくなれば、日増しに弱体化し、自滅あるのみです。
兵隊は、つぎつぎに脱走していきます。
 

関羽が、商人から教えられて、謙虚に反省しているように、私達の日常においても、忘れてはならない大切な問題だと思います。


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