迷信(6)家康は、方位・日の善悪を、笑って無視した



こんにちは、木村耕一です。


不幸が続くと、たわいもない迷信が気になったりします。


「玄関の方角が悪い」
と言われ、大金をはたいて、自宅を改築する人まである始末。
他人の不安をあおる輩は、許せませんね。


「日の善悪や、縁起など、気にするな!」
と言って、関ヶ原の戦いに勝利した徳川家康のエピソードを紹介しましょう。

関ヶ原の戦いは、徳川家康の東軍、石田三成の西軍、合わせて15万を超える兵が激突した、天下分け目の合戦である。
家康が、大軍を率いて江戸城を出発しようとしたのは、9月1日。
この日、1人の老臣が、
「今日は、縁起の悪い日でござる。どうか、出陣を延期してくだされ」
と進言した。


出陣には、日柄のいい日を選ぶのが、当時の常識であった。
また、徳川家の命運を分ける大事な一戦である。
神経質になるのも無理はない。


「どんな日だ」
家康は尋ねた。


「西塞がり(にしふさがり)でござる」
家康は、今、江戸から大坂へ向かおうとしている。
進行方向は西──。
その「西」がふさがっている、とは、戦いに不利だという意味になるのだろう。


家康は、一笑に付した。
「西がふさがっているならば、自分で破り、開いて進むまでだ。気にする必要はない」


東軍は、予定どおり出発した。
大坂を中心とする西軍と、関ヶ原で雌雄を決し、わずか1日の戦闘で、勝利を得ている。
「縁起の悪い日」に出陣して、徳川幕府300年の礎を築いたのだから、家康にとって、こんなにめでたい日はなかろう。
もともと、日付や方位に善悪などないのである。
(『こころの道』より)


もし、家康が縁起を気にする弱い人間だったら、日本の歴史が、大きく変わっていたかもしれませんね。



こころの道
木村耕一編著
定価 1,575円(税込)
(本体1,500円)
四六判上製 296ページ
ISBN4-925253-14-X

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