◆『こころの朝』「はじめに」より著者の言葉


 同じ話を聞いても、大きく進歩する人と、そうでない人があります。違いは、どこにあるのでしょうか。

 強さの秘訣を尋ねられた上杉謙信は、「義経から学んだ」と言っています。400年も前の人から、どうやって教わったのか。それは『平家物語』でした。

 謙信は、こう語っています。

「ほとんどの人は、『昔、そんなことがあったのか』という思いで聴いているから、まったく自分の役に立たないのだ。
私は、義経が戦う場面では、自分ならどうするか、常に我が身に置き換えて聴いているから、学ぶことが多い」

 このように、歴史上の人物のエピソードや寓話を、自分の生き方に当てはめて読んでみると、これまでにない発見があるはずです。
時代は変わっても、人間の心は変わりません。私たちが直面する困難や苦しみは、人生の大先輩たちも味わってきました。その成功と失敗の原因を見つめれば、必ず、自分の人生にプラスになります。

 歴史上の人物の生きざまを眺めてみると、
「まいたタネは必ず生えるが、まかぬタネは絶対に生えない」
という教訓が、一貫して流れていることが知らされます。原因なくして結果は生じません。成功も栄達も、みな、その人の努力精進の結果です。

 朝の来ない夜はありませんし、春の来ない冬もありません。遅い早いはあっても、善いタネをまけば必ず善い結果が来るのです。




 1万年堂出版から、「私の座右の銘」と題する体験談を募集したところ、とても多くの投稿がありました。読者の皆様が、それぞれの教訓を胸に、明るく生きようとされている姿が伝わってきます。本書に掲載できた原稿はほんのわずかです。ご応募いただいた皆様に心からお礼を申し上げます。