こんにちは、木村耕一です。
宮崎駿のアニメ「風立ちぬ」。
このタイトルには、どういう意味があるのだろう……。
そんな興味がわいたので、まず、堀辰雄の小説『風立ちぬ』
(昭和13年発表)を読み始めました。
緑の丘で、絵を描いている節子。
白樺の木陰にたたずむ「私」。
恋人たちのそばに、不意に風が立ち、描きかけのカンバスが草むらに
倒れる……。
その時、ふと口をついて出た詩句が、
「風立ちぬ、いざ生きめやも」
フランスの、ポール・ヴァレリーの詩『海辺の墓地』の一節です。
(堀辰雄の名訳)
「風立ちぬ」とは、風が立った、風が吹いたという意味。
「いざ生きめやも」は、「さあ、生きていこう」「生きようじゃないか」というニュアンスがこめられています。
節子は、重い病気(結核)をわずらっていました。
あとわずかな命、かもしれない。
そんな中でも、悲観せず、1日1日を輝かせたい、
「風立ちぬ、いざ生きめやも」
「私」は、節子の肩に手をかけたまま、何度も口ずさむ……。
暗いテーマなのに、美しい文体です。
死を見つめた時にこそ、大切なものが見えてくるように思います。
月日は、風のように過ぎていく。
無為にすごしたり、ただ辛いことを流したりするのではなく、
「いざ、生きめやも」と、一歩前へ出る生き方をしたいですね。