「思いやり」の深遠さ、温かさ、優しさにふれて(木村耕一『思いやりのこころ』の感想)

 何度も胸が熱くなった。覚えず涙のこぼれるときもあった。『思いやりのこころ』の、一編一編から感じられる「思いやり」の深遠さ、温かさ、優しさにふれて。
心に染む「思いやり」の温かさを私に運んできたのは、二宮金次郎の農村立て直しにかかわる、妻への思いやりだ。
金次郎が藩主から任された「桜町領」の財政再建。その大任を果たすには、家財を整理し、荒れた土地に移り住む必要が。妻にまで苦労を強いることを望まなかった彼は、自分の思いを率直に伝える。「黙ってついてこい」とか、「仕事が大事だ」といった、相手を強引にこちらに引き込む言い方はしないで。
この誠実な思いは、当然のことながら妻の心に届く、「あなたが水火の難を踏まれるならば、私も一緒に踏みましょう」と妻に言わしめるまでに。
ここでも私は、胸を熱くするとともに、自分自身との対峙を余儀なくされた。「お前は、人に誠実か」と。それに胸を張って同意することは難しいが、この本に出会えたことで、そういうことを意識する生き方をしたいと思った。
この『思いやりのこころ』に登場したさまざまの「思いやり」に心を動かされ、涙した。そして、晴れやかな気持ちになった。
茨城県 52歳・男性・公務員)